韓国映画『パラサイト 半地下の家族』最後はどうなる?ネタバレ解説&評価
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
スポンサーリンク

『パラサイト 半地下の家族』

2019年製作/132分/PG12/韓国
原題:Parasite
配給:ビターズ・エンド

監督
ポン・ジュノ
脚本
ポン・ジュノ ハン・ジヌォン
撮影
ホン・ギョンピョ

キャスト
ソン・ガンホ
イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン
チェ・ウシク
パク・ソダム
イ・ジョンウン
チャン・ヘジン
チョン・ジソ

 

 

『パラサイト 半地下の家族』1.5/10うんこ (10うんこ=クソ映画)
時計回りにお願いしたくなる映画

バランスの人

本当にポンジュノはバランスの人だと思う。

これまで監督した作品、『殺人の追憶』(2003)、『グエムル−漢江の怪物−』(2006)は韓国本国において観客動員の記録を塗り替えるような大ヒットを生み出したかと思えば、ごっそり映画賞までもかっさらっていくのである。
とんでもなく欲張りなわけだが、この大衆にも批評家にもウケる娯楽映画を生み出せる無双っぷりは、韓国映画が国から受けるバックアップが日本よりは強いことを考慮しても、実写邦画界からすれば奇跡ですらあると思う。

特にポン・ジュノ作品で個人的にオススメなのは『母なる証明』だ。
こんなのを冒頭に書くのはどうかとも思うが、正直僕は『パラサイト』より好きだ。
よく宣伝文句で”魂が震える”みたいな、よく分からないものがあるが、僕は『母なる証明』を観た時そんな感覚に襲われた。
興奮状態で座席を立つのを忘れるような状態。
話の芯はそれこそ”息子を思う母の愛”なのだが、それをミステリー仕立てで先の見えない展開でグイグイ引っ張る。
しかしすごいのはストーリーというより、一つ一つの画にあり、「なんだ、これは?」という画の目白押しなのである。
とこのままだと『母なる証明』の記事になりそうなのでここまでにするが、得体の知れないモノに出会えるので、是非これを機に多くの人に見てほしい。

ポン・ジュノ監督作品を観る
U-NEXTならポン・ジュノ監督作品『パラサイト 半地下の家族』(無料トライアウトで貰えるポイントで視聴可能)『母なる証明』などを無料で鑑賞できます。
(見放題対象作品、解約可能な31日間無料トライアルあり。2020/11/26日現在)

②amazonプライムビデオで観る

 

本作『パラサイト 半地下の家族』もとにかく”面白い”。
この”面白かった”という感想はあまりにも凡庸で抽象的で人によって意味合いが違う表現である。
だがどんな映画製作者であっても鑑賞後に観客に感じてもらいたい極上の感想はこの単純な”面白かった”であるはずで、邦画の批評家受けする作品と大きく違うのはここだと思う。
ちゃんとエンターテイメントとして成立しているのだ。
観客に驚き、緊張、笑い、涙をこの上なくバランス良く提供し、かつその中に絶妙に韓国を蝕む病理を織り交ぜてくるのだから本当に感心してしまう。
鑑賞中から”面白いなあ”と思わせ、鑑賞後にはあれはどういう意味だったのかと様々な考察まで強いてくる。

んー本当に恐ろしいバランス感覚だなあとため息ついてしまう。

以前読んだ黒沢清監督との対談で「韓国映画は本当に色んな制約があって、日本の映画監督が羨ましいですー、ハハハ」なんておいおい、皮肉か?と思うような発言もしていたけど、こんなに好き勝手やって(いるように見える)大ヒットを飛ばし、そこそこお金を儲け、名声まで手に入れるのだから日本の映画人たちはあのモジャモジャを引っ張りたくなっているに違いない。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

ちなみに先程から欲張りとか好き勝手言ってるけど、インタビューやメイキング映像、そして僕は実際に試写会でポン・ジュノを見たことがあるんだけど、それらを見る限りとにかく腰が低くて心から映画大好きって感じの人なので誤解されずに。

 

韓国初のカンヌ、パルム・ドール

今作は米アカデミー賞でアジア初の作品賞にノミネートされたらしい。
アジア作品でもその対象になり得るのかとその事実に何よりも驚いたが、今作が注目されるきっかけになったのはアカデミー賞より、まずはカンヌ国際映画祭で韓国映画初の最高賞パルム・ドールを受賞したことだ。
この前年のパルム・ドールが日本の是枝裕和監督『万引き家族』
2年連続アジア映画に与えるなんて、お互いを意識させて更なる国家間の関係悪化を狙っているのか、なんてポン・ジュノ映画のようなアメリカ陰謀論を勘ぐりたくなるけど、まあ本当に喜ばしいことだと思う。
でもこの2作品はアジア映画てだけでなく”家族”がテーマという共通項があって、厳密には全然違うから比べる事自体お門違いなんだけど比べずにはいられない。
そこでさっきの話に戻ると、やっぱり『万引き家族』って鑑賞後”面白かったー”ってなるかというとそれとは違う。
是枝さんの作品は映画としての強度も凄まじくて、鑑賞後の”映画観た感”も高いんだけど”面白かった”という表現とは違う気がする。
そんなニュアンスの違いなんて他人からすれば知ったこっちゃないが、僕の中では映画として『パラサイト』の圧勝という感じだ。
まあもう単純な好き嫌いの話になっているが、映画なんてそれで判断されてしまう残酷なものだからしょうがない。

何が違うのかというと『万引き家族』は映画として真面目すぎるんだと思う
優等生的できれいにまとまっていて、「家族とは何か、血の繋がりとは何か、安藤サクラの顔は変だ、現代日本に根付く社会問題はこれだ」なんて事柄を否が応でも考えさせてくる。
変な顔だとか言ったけど安藤サクラの取り調べシーンにはハッとさせたれたし、ラストの決別シーンはよく分からない感情になったし、松岡茉優の水着には興奮したし、歯がない樹木希林はなんでいつもそんな自然に画面に存在してられるのか不思議でしょうがなくなったものだ。
でも『万引き家族』にはどこか隙がないんだと思う。
それは破綻がないということだ。
リリーフランキーなんてふざけた事するし、樹木希林の独特なユーモアもあるし、是枝さんもどこかで笑わせようとするところがあるんだけど、頭が良すぎる人が作る笑いというのか…
ずっと背筋をのばしていなければならないような、息苦しさを感じるのである。
あくまで僕の感覚でね。
(そういう面から僕の一番のお気に入り是枝作品は『歩いても 歩いても』。樹木希林無双が観れます。おすすめ)

とはいえ、ポン・ジュノだってコーエン兄弟なんかに感じるインテリが作る映画臭はすごい。
「どーだ、面白いだろう?」というちょっと上からの自意識みたいな匂い。
プンプンしてくる。
でもどこか作り手たちの気持ちの余裕を感じるのでもっと楽に観れる。
何も考えず映画を観たいときだって誰にで、そんな時だってポン・ジュノの映画は受け入れてくれる気がするのだ。
「ソン・ガンホと同じようにアホ面をして観てもいいよ」とでも言ってくれているような間口の広さを感じる。
常に真面目にふざけている空気が画面を覆っている。
そこでようやく冒頭に記した「時計回りでお願い」に触れるのだが、この映画後半にさしかかるところで登場するこのセリフに僕は完全にやられてしまった。
笑うと同時に驚いた。
完全に視界の斜め上からやってきた不意打つそのセリフに、なんでこんなことを思いつくのかと心底驚いたのだ。
「”時計回り”というのが何か重要なキーワードなのでは…」なんてアホな深読みをしたり…
結局そこには多分何一つ意味はないのだが、禍々しい雰囲気に満ちたフレーム内で繰り広げられるシリアスな物語にそこはかとなく漂い続けるユーモア。
このバランス感こそポン・ジュノ作品の魅力であり、『パラサイト』が無双状態になった理由だと思う。

ようやく映画の中身について

完全にポン・ジュノ持ち上げて是枝さんをけなすような話に逸れまくってしまったのでようやく映画の中身の話に。
物語としては、半地下の粗末な家に住む失業中の一家4人が、あるチャンスを機に知恵を絞って裕福な一家に別々の職種で就職しようと画策するというもの。
その食にありつくまでの主人公一家の様子をユーモアを交えスリリングに描いているのだが、その様子はまるでパラサイト=寄生虫なのだ。
しかしこれでしばらく生活は安泰だと思った矢先、裕福な”家”には驚くべき秘密があって主人公一家は大ピンチに!みたいな展開。

その主人公一家の父を演じるのはいつもどおり安定のソン・ガンホ。
だが今回のソン・ガンホはいつもとは違った。
とてつもなく不気味なのだ。
普段は田舎にいそうな何も考えてない、呑気なちょっと汚らしい親父なのに、ふとした時に脳が宇宙に行ってしまっているような顔をするのだ。
「なんだ、そんなのいつものことだ」と思う方もいるだろう。
しかし何かが違うのだ。
いつものちょっと抜けててアホで何考えているか分からない感じではなく、とてつもない裏があるかのような分からなさなのだ。
最終的にはびっくり展開に行き着くわけだから、演じ分けているとしたらほんとにすごい。
こんな安心できるアジア俳優は役所広司くらいしか浮かばない。
いつかポン・ジュノ、黒沢清の共同監督でやってほしいぞ。
超B級映画『ソン・ガンホVS役所広司』。

パンフレットでポン・ジュノ自ら「ネタバレしないでねー!」
と思いっきりM・ナイト・シャマランの『シックス・センス』のネタバレしながら警告してて「他人の映画はいいんかい」と笑ってしまった。
だがこのように色んなところでネタバレ厳禁!となっているが、そんな映画か???と僕は思ってしまう。
そんな大どんでん返し有りきの映画なのか?と。
たしかに物理的にもどんでん返しな展開だが、それを知ったところでこの映画の面白さが半減するとは思えない。
そんな言葉で説明できるような物語を聞いたところで、あの画面の迫力に対する驚きはすこしも褪せないと思う。
ま、とりあえずストーリーネタバレを事細かく書くのは避けときます。

最後の展開とその考察

で、そんな緊張感とユーモアに満ちたサスペンスコメディは終盤いつものようにポン・ジュノ特有のバイオレンスに行き着いてしまうわけで、それが大好物な僕は「よ!待ってました!」と拍手したくなったが、後から考えるとちょっと安易だったかなーとも思える展開を迎える。
世界が混乱に陥り、まさにどんでん返しが起きるのだ。
地上の者は揺らぎ、半地下の者は地下へと転落してしまう。
半地下の世界から地上を目指したら地下に行ってしまったという物語の不条理さ、でもそこにかすかに感じずにはいられない美しい(画として)希望は素晴らしいバランスだと思った。
ユーモラスなんだけど、結果はすごく残酷。
だがそれでも人生は続くのだという映画的なラスト。
これがすごく個人的には好きなのだ。

ポン・ジュノがインタビューで言っているが韓国人でなければこの映画を完全に理解することはできないらしい。
たしかにそもそも半地下に住むってこと自体日本人にはいまいちピンとこない。
拡大し続ける格差社会を表していることは分かってもその細かいニュアンスは彼らじゃないと本当のところは分からない。
それでも『パラサイト』には胸に響く普遍性があると思う。
興味深かったのはパラサイトされる側の裕福な一家が決して悪意がある人間たちではないということだ。
この一家は韓国社会における財閥のような存在である。
富を独占する一部の裕福な者たち。
この映画で描かれるこの裕福な一家もさぞ嫌味な奴らなのかと思いきや、自分たちより貧しい主人公一家、言い換えれば自分たちより社会的立場が低いであろう他者に対し悪意、敵意や軽蔑心を持ってはいない。
農村の象徴であるような切り干し大根の匂いがするのがちょっときついけど、仕事ができるからいいじゃないかと雇い続ける判断もしている。
つまり何か酷いことを主人公一家に能動的にすることは決してない。
にも関わらず2つの家族は最悪の結末を迎えてしまう。
その引き金が”無関心”であったことが何とも不条理だ。
悪意ですらない無関心さ。
自分たち以外は存在すらしていないんではないかと思わせる、咄嗟の場面で剥き出しになったパク社長の他者への無関心さがなんとも恐ろしい。
彼らにとって他者は悪意も善意も向ける存在ですらなかったのだ。

いや、待てよ…
あの場面では社長が自分の家族を第一に考えるのは至極当たり前なことだ。
ずっと風呂にも入っていない人間の臭いに反射的に不快感を示してしまうのも正常な人間なら普通のことである。
しかし結果的にギテクは振りかざす必要のない刃を振りかざして世界を破壊してしまった。
そうだ、実は何よりも恐ろしいのは咄嗟に剥き出しになった裕福なものへの潜在的な敵対心、逆恨みの心なのではないか。
彼ら裕福なものは大雨による災害で街が大変なときにホームパーティーを呑気に開いてしまってはいる。
だがそれは悪なのか?罪なのか?
パク社長夫妻にあるのは他者への無関心だと決めつけた僕が潜在的に持っている偏見も恐ろしい…

 

ラストの誕生日パーティーのカオスはまるで現実世界の縮図だ。
地上、半地下、地下の住人、その誰一人として決して悪人ではなかったのに壊れてしまった世界。
原題”parasite”とは絶望的なほど開いた格差社会において、ふいに表出してしまった人間に潜む恐ろしい心のことであった気がしてならない。

ポン・ジュノ監督作品を観る
U-NEXTならポン・ジュノ監督作品『パラサイト 半地下の家族』(無料トライアウトで貰えるポイントで視聴可能)『母なる証明』などを無料で鑑賞できます。
(見放題対象作品、解約可能な31日間無料トライアルあり。2020/11/26日現在)

②amazonプライムビデオで観る

スポンサーリンク