映画『ヴェノム』とは?
あらすじなど作品データ超ざっくりですがこんな感じ。
作品データ
原題 Venom
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間 112分
映倫区分 PG12
スタッフ
監督 ルーベン・フライシャー
脚本 ジェフ・ピンクナー
スコット・ローゼンバーグ
ケリー・マーセル
撮影 マシュー・リバティーク
キャスト
- トム・ハーディ エディ・ブロック/ヴェノム
- ミシェル・ウィリアムズ アン・ウエイン
- リズ・アーメッド カールトン・ドレイク
- スコット・ヘイズ トリース
- リード・スコット ダン・ルイス
- ジェニー・スレイト ドーラ・スカース
あらすじ
「誰もが望む、歴史的偉業」を発見したというライフ財団が、ひそかに人体実験を行い、死者を出しているという噂をかぎつけたジャーナリストのエディ・ブロック。正義感に突き動かされ取材を進めるエディだったが、その過程で人体実験の被験者と接触し、そこで意思をもった地球外生命体「シンビオート」に寄生されてしまう。エディはシンビオートが語りかける声が聞こえるようになり、次第に体にも恐るべき変化が現れはじめる。
元々マーベルのスパイダーマンの1キャラクターであったヴェノム。
今作はSONY配給なのでマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU今も絶好調の『アベンジャーズ』とかやってるマーベルの作品群。現在はDisney配給)とは一応別シリーズらしいけど、あわよくば『スパイダーマン ホームカミング』とクロスさせた世界にしたいという野望があるそうな。
金の匂いしかしねえ。
でも監督はクロスしないとも言っている。
…まあどっちでもいいや。
僕はMCU第1弾であった『アイアンマン』が大好きだ。
アメコミ映画はどこかくだらない気がしてて好きじゃなかったが、『アイアンマン』を機にMCU作品はほぼ全部観るまでになった。
まあアメコミ映画が好きになったというよりロバート・ダウニー・Jrが好きになったという方が正確かもしれない。
そんなそこそこアメコミ映画好きな僕なのだが、『スパイダーマン』映画化作品群だけはMCU版スパイダーマンである『スパイダーマン ホームカミング』でもやはりダメだった。
糸を張り巡らし、宙を舞うシーンがCG丸出しのペラッペラの紙人間に見えてどうにものれない。
なのでサム・ライミ版スパイダーマンシリーズは2,3ともテレビでやってたの少しチラチラ観ただけでちゃんと観てない。
というのもヴェノムはサム・ライミ版の『スパイダーマン3』で実写映画初登場していたらしい。
その役割はヴィラン、つまり悪役だ。
そんな他作品の悪役自体が主役というのがまず興味深いこの映画。
近年のアメコミ映画はリアリスティックで『ヤッターマン』のドロンジョ、『ポケットモンスター』のロケット団のようなマイルドな世界観にはならないはず。
ハードな世界観の悪役が主役なんて、世界の破壊が目的に違いない。
ヒーローものと言えば勧善懲悪が常なので、そんな倫理観が欠如したような斬新なものが観たかった。
これはアメコミ映画が新たな世界に足を踏み入れた傑作なのでは…
そんな勝手な期待をして鑑賞してしまった。
映画『ヴェノム』感想 (ここからネタバレあり)
うんこ度(このサイトではどのくらいつまらなかったかで評価してます。10.0=ダメ映画)
6.5/10 ポケモンくらいソフトな世界観の映画
まあびっくりするくらい期待していたものとはかけ離れてた。
面白かったかと聞かれたら
「面白くないわけじゃないけど、何も心に残らない映画」
そう答える。
今振り返ると僕の中では”どうでもいい映画”だった。
悪?
一言で言うと壮大なCGてんこ盛りの「ど根性ガエル」といった感じ。
原作知らんので原作のテイストがそうなのかもしれないが、とりあえずヴェノムが(正確には取り憑いたシンビオートが)かわいいのだ。
宿主エディの元恋人との復縁を応援、サポートしたり、というかむしろエディに恋愛の助言までしやがる。
そしてと凶悪と宣伝され、あの見た目だしてっきり唯我独尊キャラなのだろうと思いきや、エディの言うことに素直に従ってしまう始末。
ただのペットじゃねえか。
というか、かわいいはかわいいで別にいい。
ギャップのあるキャラクターは魅力的だ。
だがその対局のハードであるべき部分が全然弱い。
R指定気にしてヒヨったのだろう。
最大の怒りポイントはヴェノムが人間を頭から食べるという最高の見せ場だ。
それをなんと
全然画として見せない。
信じられねえ。
なんのための映画というメディアだ、ウンコタレ。
大人の事情は分かる。
だがもっと新しさを出すためにもマーべル映画なのに引くくらいの残酷描写で人間食ってほしかった。
正解は”基本はシリアスな物語展開かつハード描写で、時折ヴェノムの茶目っ気、人間臭さで一息つかせる” だったのではないか。
まあ期待しすぎた自分が悪いのだ。
原作でもスパイダーマン以外にはそんな悪行しないキャラクターらしいから。
構成のバランスの悪さ
終始乗り切れないこの作品。
たくさんダメなところがあるが一番は弱すぎる脚本だろう。
ヴェノムがトム・ハーディの頭ン中覗いて人間性を一撃で気に入ったのは理解できる。
映画てそういうものだから。
でも人間たちもヴェノムへの理解は早すぎる。
確かに少し吐いたり苦しんだりするが、それにしてもありえないウルトラスーパースピードでヴェノムを受け入れてしまうのだ。
普通はもっとこうなる。
ノリがかるいのだ、ペラッペラのスパイダーマンなみの軽さ。
なのに前半エディがヴェノムに寄生されるまではやたら長い。
バランス悪すぎる。
もうちょいなんとか出来ただろ。
『ヴェノム』、この映画はコントだ。
結局一番の”悪”は誰だ
まあ本作も悪が主役と言ってるが、結局は世界を混乱に陥れる主人公なんかではなくて、単なる世界を救う主人公だった。
てことで勧善懲悪モードに頭を切り替えて視聴する。
だが悪役ドレイクを倒し万々歳なはずなのになんかスッキリしない本作。
すこし考えてみたがやっぱ悪てキーワードが重要な気がする。
結論を言うと
映画の雰囲気に悪役が合ってないのだ。
今作の悪役的位置づけのライフ財団リーダー、ドレイク。
ライフ財団は医療の発展や宇宙開発などに多大な貢献をしている。
なんだかんだ言っても結局は自分たちの暮らしの利便性ばかりを第1に追い求める現実世界からすれば素晴らしい組織なわけだ。
でもドレイクはその裏でホームレス拉致して人体実験しているマッドサイエンティストだったわけで、倫理的にはもちろん悪い。
目的のために多少の人命は容赦なく犠牲にするのだ。
……あれ。
でもそれって悪人だから食べてもまあいーかと結論づけたエディ/ヴェノムも同じじゃねえか。
命を奪っていることには結局変わりない。
普通のヒーロー物のように歯向かってきた相手を倒すわけでもなく、見逃せたのに気分でパクっとやってやがった。
しかも栄養補給目的。
快楽殺人。
一番たちが悪い。
そういうとこからするとこのお子様向けコメディテイスト映画の正しい悪役はヴェノムより更に悪い、とにかく誰から見ても悪である存在じゃないとダメだ。
主人公をヒーローテイストにしたいのであれば。
ドレイクはやりすぎたが、今作では人類の明るい未来を本気で考えていた人物とも捉えることができてしまう。
人によっては必要悪だと捉えられる微妙な倫理観の存在な気がするのだ。
他はかっっるいノリの映画なのに悪役に少し複雑なキャラクターを設定してしまったせいで見ている間にそんなことは意識せずともどこかスッキリしないのだ。
ヴェノムが人類すべての敵だというくらい振り切った悪いやつだったら、ドレイクはヴェノムにとっていい悪役だったと思う。
映画全体を通して道徳観、倫理観を今一度問う映画にも出来たんじゃないかと。
なによりそんな映画が見たかった。
ヴェノムのような善悪が曖昧な存在を主人公にするのはバランスが難しい。
やはりどっちかといえばシリアスよりな作風の方が上手くいったんじゃないかと思う。
ヒロイン???
あと一番最初に気になったのがヒロイン。
心からの疑問なのだが、スパイダーマン系はヒロインをブスにしなければいけない協定でもあるんだろうか。
…マーベルは誰かに脅迫でもされてるのか。
まずサム・ライミ版の『スパイダーマン』のキルスティン・ダンスト…
こいつはひどい。
どのシーンでも、どの角度で見ても、何度見ても、気分を変えてから見ても、いつでもブスだ。
だから全然感情移入できない。
そんな頑張って助ける必要ないだろ、というかむしろ助けるな、こいつかなり悪い女だから。
とスパイダーマンに話しかけてしまっていた。
そんな現象がこのヴェノムでもおきていた。
今作のヒロイン、アンを演じるのはミシェル・ウィリアムズ。
BBAじゃねえか。
見た瞬間はトム・ハーディのお母さん役かと思ってしまった。
その後すぐ展開で恋人だと分かるのだが、序盤だし最初出てきてすぐ犠牲になる奴だろうくらいに思ってたら、なんと正ヒロインだった。
すげーいい女感出してくるのがほんと腹たった。
しかも序盤でトム・ハーディがこんなばばあにすぐふられてしまう。
その後劇中ずっとこのババアを追いかけ続けるクソ展開。
トム・ハーディ、おまえならもっといい女の子ゲットできるからもういいよ。
そう肩をたたいてあげたくなるくらい全然ついていけない。
あ…
このミシェル・ウィリアムズて『ブルーバレンタイン』や『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の人じゃねえか。
あれ、好きだったのに。
けっこう好きな映画に出てる女優だった…
どうしたんだよ、この数年でなにがあったんだ。
初恋のあの子を十数年ぶりに見かけたあの感じだ。
アクションについて
ヴェノムは液体みたいな、壁にペンキをバケツごとぶっかけるときの動きのような体だ。
ビョーンと体が伸びる。
それを活かしたアクションシーンが展開されるのだが、特に新しさや新鮮味はなかった。
あと最近のアクション映画の特徴だが、この映画も正直アクションシーンでなに起こってんのか良くわからん。
短いカット、スピーディーな編集。
まあなんか派手なすごいこと起きてんだなあてことは分かるよ。
でも詳細が速すぎてわからん!
いいのかなあ、この映画の流れ。
あと劇中トム・ハーディがバイクでカーチェイスするくだりがあるのだが、完全にスタントマン丸出しだ。
特に後ろで爆発するカット。
そこは隠さないんかい、得意の早い編集で。
と思わず言いたくなる。
意味がわからない。
今は激しく動くスタントマンの顔だけCG合成する技術もあるはずだし、もうちょっとなんとかしてほしかったなあー。
トム・ハーディという男
それにしてもトム・ハーディという人は不思議な人だ。
特別ハンサム!
という感じも個人的にはしないし、背もそこまで高くないし、歩き方がガニ股気味でなんか変。
なのに『マッド・マックス』、『レヴェナント』、『ダンケルク』と大作で重要な役を演じています。
でもなんでかはよくわかんないけど
なんか気になっちゃうから出てると見てしまう不思議な魅力。
今作ではヴェノムの声もトム・ハーディが演じているらしいんですが
超激渋な低音ボイス
かっこいいー
でも変に明るい映画だったから正直トム・ハーディじゃなくても良かったなあ。
トム・ハーディはもっと影がある屈折した男が似合うと思う。
唯一笑ったところ
文句ばっか言ってスッキリしてしまった。
あんまないけど唯一笑ったところ。
エディがシンビオートに取り憑かれてグロッキー状態でアンのいるレストランに突入してくるシーン。
シンビオートのせいで生きたロブスターを食そうと水槽に突っ込むところは気持ち悪くてよかったなあ。
トム・ハーディ史上の名シーンだった。
けっこう笑ったけど、周りの人はクスリともしてなくて、その状況が更に笑わせてくれた。
最後の展開
ラストバトル
最後はベタ〜に地球侵略を目論むライオット(ドレイク)VSそれを止めようとするヴェノム(エディ)の対決。
宇宙船の前でのラストバトルは、元々ヴェノムよりライオットは強いのでめちゃめちゃ苦戦する。
その後のトムとヴェノムの気持ちも融合し始めてからより強くなるっていう少年マンガ全開な感じは楽しめた。
単体ではダメな二人(それぞれ人間界、シンビオート界で)が補い合って強くなるというベタ〜な感じがね。
ライオットがヴェノムに対して「強い宿主だ」と評する。
熱い!そこだけはね。
あとラストバトルの決着時、ヴェノム(シンビオート)が「さらばだ、エディ」と自分を犠牲にして炎に包まれていくという『ターミネーター2』的な別れ方をする。
ここ数年がんばって道を渡るカタツムリを見ただけで泣けてくるのに
絶対死なねーな、こいつ
て分かっててもなんか良かった。
あれ、ベタベタな展開に弱い…
全然ひねくれてないな
ラストバトル後
でもだめだ。
その後まあ当然ヴェノムは生きているわけだが、その生きてましたーて事実の明かし方。
なんの脈絡もなく生きてましたーて明かしやがって。
しかもアンとの、日本人にはわからないアメリカンなジョークを交わしてそうな雰囲気の会話中に明かしやがって。
うまい終わり方だとでも思ったか、バカめ。
こっちは泣きかけてたんだぞ。
てことでスマートにサクッと終わらせる方を選んだんだろうが、個人的には『リーサル・ウェポン2』のラストバトルの後のように相棒の腕の中で
「死ぬんじゃないぞ、おい」
「ううっ」
「おい、だめだ!」
「えへへ、実は大丈夫でーす」
「なんだよー」
みたいなまたまたベタなやり取りが見たかったなあ。
結局トムはヴェノムに寄生されたまま、ジャーナリストとして新たな一歩を踏み出し、アンとは恋人には戻れないまま終わる。
めでたしめでたし。
エンドロール中の映像
マーベル・シネマティック・ユニバース作品と同じくエンドロール中や後半に映像が挟み込まれ、ウディ・ハレルソンがカツラ被らされて出てきた。
どうやらカーネイジというスパイダーマン、ヴェノム共通の最凶の敵という役どころらしい。
そういえば導入でシンビオートは4匹いたはずなのにヴェノム、ライオット、途中で息絶えるやつの3匹しか行方が判明してなかった。
あーそういうことかと。
このウディ・ハレルソンが演じていたのはクレタス・キャサディというキャラクターらしい。
もう続編やる気満々だ。
世界で大ヒットしたらしいので決定みたいだ。
多分俺は観ない!と言い続けて言い続けて結局観ます。
ウディ・ハレルソン好きだから。
ウディ・ハレルソンが好きになったきっかけは、海外ドラマ史上一番面白かった傑作『TRUE DETECTIVE/二人の刑事 』。
TVドラマなのに映画俳優である、マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンが主演ということで観てみたら最高だった。
amazon prime videoで観れるので是非観てみてください。
海外の評価
海外でも歴史的大ヒットをしているマーベル・シネマティック・ユニバースシリーズとは別シリーズのこの作品。
海外では『ヴェノム』も歴史的な大ヒットしてるらしい。
box office mojoによると全世界興行収入がなんと約7億8千万ドル(2018/11/20時点)
て全然ピンとこないがこれはSONY配給映画史上1位の『スパイダーマン3』(2007)の約8億9000万ドルに迫る超大ヒットらしい。多分越せないだろうけど。
ちなみにマーベル・シネマティック・ユニバース作品第1弾の『アイアンマン』(2008)が世界興行収入約5億8500万ドルだから相当なヒットだ。
また公式サイトによるとアメリカ国内では10月公開映画のオープニングウィークエンド成績がこれまでのトップだった『ゼロ・グラビティ』を抜いて史上1位を果たしている。
でも評価は批評家と一般人とで分かれているらしい。
有名な批評集積サイトRotten tomatoesによると(2018/11/20時点)批評家の支持率は29%、採点は4,4/10と相当低い。
ですが一般観客の支持率は86%、採点は4,3/5とこちらは大分高い。
批評家と一般観客の評価は割れるのが常ですがここまで開くのはすごい。
まあ批評家は酷評するだろう、当たり前だ。
目新しくはないし何より子供向けなストーリーで細部が破綻してる。
でも一般客には何も考えずに楽しめる映画なのだろう。
多少の破綻は気にせず、ヴェノムのデロンデロンドロンドロン感たっぷりのアクション、かわいさ、エディとのバディ感、アンのばばあ感を純粋に楽しむ。
割り切って観てる一般客のほうが批評家より大人なんだろう。
最後に
個人的には期待はずれな微妙な映画だった。
やっぱり映画のテイスト、方向性を間違えたんじゃないかと思う。
頼みのアクションも凡庸。
特に目新しいことはなかったかなー。
最後に一応。
ヴェノムになんの関係もないのにディスりまくったキルスティン・ダンスト、すみませんでした。
終