映画『ハンテッド』(2003) ナイフ格闘アクションの傑作を紹介、評価します!

最近の派手なだけのアクション映画には飽きたー

地味で地味で地味なんだけど、でもちょっと骨太で…ナイフなんかで戦う、でも基本地味なアクション映画が見たい!!!

 

なーんて人はなかなかいないと思いますが、今回はそんな感じのオススメの映画『ハンテッド』(2003)を紹介しまーす。

読むのがだるい人も②『ハンテッド』をオススメする理由だけでも読んでみてください!!

 

『ハンテッド』とは?

『ハンテッド』は一言で言うとトミー・リー・ジョーンズ、ベニチオ・デル・トロという激渋俳優2人がナイフバトルを繰り広げるだけの映画です。

薦めてるように思えない1文ですが、それだけで最高な映画なんです!

ということでもう少し詳しく紹介していきましょう。

作品データ

作品データはこんなかんじです。

作品データ
原題 The Hunted
製作年 2003年
製作国 アメリカ
配給 日本ヘラルド映画
上映時間 94分

スタッフ
監督 ウィリアム・フリードキン
製作 ジェームズ・ジャックス
リカルド・メストレス
製作総指揮 ショーン・ダニエル
デビッド・グリフィス
ピーター・グリフィス
マーカス・ビシディ
脚本 デビッド・グリフィス
ピーター・グリフィス
アート・モンテラステリ
撮影 キャレブ・デシャネル
音楽 ブライアン・タイラー

キャスト
ベニチオ・デル・トロ
トミー・リー・ジョーンズ
コニー・ニールセン
レスリー・ステファンソン

解説
オレゴン州の山中で連続殺人事件が発生。犯人は、元・特殊部隊の精鋭として活躍したハラム。彼は優秀な兵士として功績を収めながらも、過酷な戦闘によって心を病み、殺人者と化してしまった。神出鬼没のハラムを捕まえるべく、かつて彼に戦闘術を教えた男L.T.が駆り出されることに。決死の追跡の果て、ハラムは逮捕されるが、その後、護送中に逃亡を図り……。サバイバルと殺人術を身につけた男たちが激突。アカデミー賞俳優ふたりが火花を散らす!

監督と主演

監督は『フレンチ・コネクション』(1971)、『エクソシスト』(1973)、『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1985)などで有名なウィリアム・フリードキン。男同士の対決が大好きで、かなり変な方向にこだわりが強い監督なのでこの『ハンテッド』もいびつで男くさーい映画となっています。

主演2人はトミー・リー・ジョーンズとベニチオ・デル・トロという2大激渋俳優です。僕はこの作品を高校生のときに新作としてリリースされたばかりのDVDで鑑賞したのですが、その理由がこの2人がアクション映画でバトルを繰り広げる、ただそれが観たいからでした。

トミー・リー・ジョーンズは日本では缶コーヒー「BOSS」の宇宙人ジョーンズでお馴染みですね。
僕の中でトミー・リー・ジョーンズといえば追跡者でして、『逃亡者』(1993),『追跡者』(1997),『ノーカントリー』(2008)といつでも誰かを追跡してる印象です。そう、何を隠そうこの映画でもベニチオ・デル・トロを追跡する役なのです!
怖い顔なのにどこかちょっと可愛らしい雰囲気を持っている不思議な人ですよね。
困り顔がうまいからですかね。
『ノーカントリー』なんかシワと相まって素晴らしい困り顔を披露してくれています。
あと画面に出ているだけで妙に安心感を感じられます。

ベニチオ・デル・トロはフェロモンダダ漏れ顔面圧力MAX男ですね。
顔は整っているといえるのかどうか分からない顔していますが、とにかく出ているオーラがすさまじく唯一無二な存在感です。
何も喋らなくてもいいから、とりあえず画面に映っていてくれと指示だしたくなる俳優です。
この『ハンテッド』のときはまだ30代前半で今観るとまだ幼い感じすらしますが、近年の代表作『ボーダーライン』、『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』の画面を埋め尽くす力強さ、迫力は半端ないです。
特に何もしてなくても顔面だけで迫力が凄まじいです。

 

あらすじ

ハラム(ベニチオ・デル・トロ)はコソボ紛争に従軍し、セルビア側の指揮官を殺害するなどの活躍が認められ英雄として称えられた。
が同時に現地でアルバニア系一般市民に対するセルビア側の大量虐殺を目のあたりにしたことで精神を病んでいく。

人や動物の足跡などの痕跡を元に対象を追跡するスペシャリスト”トラッカー”として活躍していたL.T.(トミー・リー・ジョーンズ)は引退し、カナダの山奥で動物保護員として暮らしていた。
そんな彼のもとにFBIからある事件の犯人を追ってほしいと依頼が来る。
それは森のなかでハンター数名が全身をバラバラにされるという猟奇的な事件だった。

森の中の痕跡から犯人のアジトを見つけだしたL.T.だったが、そこに現れた犯人はかつての軍での教え子ハラムだった。
ハラムと一戦交え、FBIの援護もありなんとかハラムを捕えることに成功するL.T.。

取り調べを開始したFBIだったが、ハラムの軍歴を理由に彼を軍に引き渡すことになる。
そして軍に引き渡され車中で始末されそうになるハラムだったが、そこから逆に軍人を始末し逃走してしまう。

L.T.は街中に消えたハラムを再び追跡開始するのであった…

さあ2人の戦いの行方は!???といった感じでーす。

『ハンテッド』をオススメする理由 *ここだけは読んでほしい

昔(90年代以前)のアクション映画を観ていてこんなことを思ったことありませんか?

(格闘シーンで主人公が敵を殴るのを見て)
おいおい、今の大ぶりクソパンチ絶対かわせただろ…

てかむしろ待ってたよな、パンチ当たるの

なんて嘘くさいアクションシーンなんだ…

 

特にアメリカ映画ですね、マッチョな男の大ぶりパンチ。隙だらけやないか…
僕はジャッキー・チェンの80年代全盛期のアクション映画で育ったので、特にそれを感じていました。
今では映画の楽しみ方も広がりそれでも楽しめるようになりましたが、昔はそういう映画にはクソ映画のレッテルを貼っていました。

昔の映画のアクションシーン(格闘シーン)はリアリティやスピード感よりも、登場人物AがBを殴ったという事実がしっかり観客に伝わるように作られていました。
当然ですよね、まずそれが分からなければ話になりませんから。

60、70年代は生まれていないので、よくは分かりませんがそれでも観客は映画館の大スクリーンに映されるその暴力行為に興奮したのでしょう。
昔はテレビなんか画面小さいですしね、映画館の大スクリーンに大写しされたパンチはゆっくりでもそれだけで迫力を感じられたんだと思います。
単純に見慣れていないという理由以外に、昔はリアリティやスピードよりも殴る蹴るという動き自体の様式美が重視されたというのもあるんじゃないかなーなんて思います。予想です。

そして時代と共にアクションはどんどん早くなっていきます。
その先駆けは先述したようにジャッキー・チェンで、『プロジェクトA』を機にものすごい速さの格闘シーンになっていきます。
これは速すぎて同時代のアメリカ映画なんかはまだまだ遅いんですが…

そして現在、ハリウッド製のアクション映画の格闘シーンもどんどん速くなり、というか一部は速すぎてもはや何やってるか分からないくらい速くなりました。それに加えてある時から際立った流行りが見られるようになりました。
それは近接格闘術が取り入れられていることです。

近接格闘術

軍隊や準軍事組織、情報機関、警察などの武装組織で戦闘技術として訓練されている格闘術。武器を持たない徒手によるものだけでなく、ナイフ、銃剣、警棒やスコップ、トマホークなどの武器も使用した内容である。

軍人が戦闘において使用する技術であるゆえ、一般的なスポーツ格闘技と異なり、相手(敵)の殺傷を目的としている。国を超えて近接格闘術におおむね共通する特徴としては、武術の経験が無い者でも短期間で習得できるように工夫されていること、人体の急所を狙うなど単純だが効果的な技で技術体系が構成されていること、などがある。こうした共通点が見られる理由は、軍隊では限られた訓練期間で隊員の戦闘力を高める必要があるためである。訓練時には防具や寸止めなどにより、安全性の確保が図られる。

特殊部隊などの精鋭部隊と一般部隊では訓練される内容が異なることが多く、精鋭部隊では高度な殺傷技術が訓練されるのに対し、一般部隊では形式的な基本技のみにとどまることが多い。また、国家や組織により訓練される内容は大きく異なり、格闘訓練を実施しない部隊や兵科もある。例えば、アメリカ陸軍では歩兵部隊以外では格闘訓練を実施しないが、アメリカ海兵隊では全地上部隊で格闘訓練が実施される。

具体的には、クラヴ・マガ、システマ、それに加えてフィリピン伝統武術カリなどを基に作られたアクションシーンです。
より実戦的で相手を効率的に制圧するもので、それまでの殴り合いとは動きがかなり違います。
有名なのは『ボーンアイデンティティ』(2002)、『96時間』(2008)、『アジョシ』(2010)、『アウトロー』(2012)などなど。
ヒットするアクション映画はほとんど取り入れられているんじゃないかという印象です。
あの007ことジェームズ・ボンドもダニエル・クレイグ作品から使用しています。
そんな流れを作った先駆的映画は間違いなくこの『ハンテッド』の1年弱前に公開された『ボーン・アイデンティティ』ではあるんですが、それ以上に僕が衝撃を受けた映画がこの『ハンテッド』でした。
『ボーン・アイデンティティ』も中盤ボーンを狙う凄腕の追跡者とアクション映画の歴史に残る1対1の格闘シーンがあります。
すばらしい振り付けで正直『ハンテッド』よりスピーディーで興奮する出来栄えなんです。
ですがそんな『ボーン・アイデンティティ』より『ハンテッド』で僕が衝撃を受けた理由は、攻撃を避けるというより、攻撃をさばき相手の急所を狙う、より実戦的な格闘スタイルに感じたからなんです。
今見るとちょっとゆっくりな動きなんですが、そのおかげで動きがはっきり見え『ボーン・アイデンティティ』やそのずっと以前から相手の攻撃をさばきまくっていたスティーブン・セガール映画よりずっと実戦的な動きに感じたんです。
これこそ求めていたリアルな気がする格闘アクション(現実世界におけるそれはぜんぜん違うのですが…)だったんです。
それは先述したフィリピンの伝統武術カリを元に振り付けを作ったからなんですね。
新しいー!!!
と当時大興奮しました。

 

ボーンシリーズも大好きなんですが、今日のアクション映画の流れを作ったのは僕の中では公開年の遅い『ハンテッド』だと思っているくらい好きな映画なんです。まあ多分そこまで映画界に影響与えてないでしょうが…

ということでスピーディーで(今となってはちょっと遅めですが)実戦的な格闘アクションが大好きな人は一見の価値があると断言できるのが『ハンテッド』です。もはや僕が感じた新しさは感じられないかもしれませんが、ヒリヒリする熱い闘いを是非観てもらいたいです。

正直その格闘アクション以外は大味な映画です。
ドラマ部分としてはちょっと残念な映画ではあります。
でもそれを差し引いても一見の価値ありです!!!

 

映画『ハンテッド』を観る

『ハンテッド』の評価(ここからネタバレあり

うんこ度(このサイトではどのくらいつまらないかで評価しています)

4.5 /10

すげーオススメしてるわりに低っ!!と思われるかもしてませんが、総合的にはこんなもんです。

アクション以外で惜しいところが多いですからね。

『ハンテッド』最大の疑問点!わかんねーよ

まず何よりも先に私の中のこの映画最大の謎を!

それはL.T.はハラムの手紙を読んでいたのかという点です。

パンフレットのストーリーでは家宅捜索した時に、宛先不明で届いていなかったハラムからL.T.への手紙を発見し、L.T.はショックを受けるみたいなことが書いてあるらしいんですが、そんな描写ありました?

ハラムからL.T.への手紙の文面と思われる苦しみの言葉が、L.T.による2人の訓練風景の回想と共に示されますが、それは家宅捜索前でした。
ラストL.T.はあっさり手紙の束を燃やしますが、その手紙を見る限り届いていたように見えます。
住所合ってますよね?そうなるとL.T.は助けを求めるハラムを無視したことになり、すげー冷たいやつだな、L.T.となるわけです。
あんなに来てたら返信くらいしろよ、と。
まあ返信してたら話にならないのか。
でもだったらやはり宛先不明で届かなかった設定がベストです。
でもそうじゃないように見える。
うーん、分からない…

ここがすげー分かりづらいんですが、おそらく届いていて無視したのでしょう。
これによって映画のドラマ性がけっこう違うと思うんですが、僕はそう判断した上で、以下続けます!!!

『ハンテッド』考察 のようなもの

では記事の流れの都合上、ここで考察を。

この映画は冒頭ナレーションで旧約聖書が引用されています。
アブラハムが神に息子イサクを始末しろと言われる話。
聖書には詳しくないですし、あまり読んでも入ってこないのですが、これは神がアブラハムの信仰心を試しているらしいんですね。
アブラハムは神のためであればと本当に愛する息子を手に掛けようとするんですが、寸前で神に止められるんです。

神はめんどくさい彼女みたいなことするんですね。

まあそれはさておき、これが暗喩であればこの場合の父アブラハムはL.T.、息子イサクはハラムでしょう。
父L.T.は息子ハラムにトラッキングを教え込みます。
ハラムが手紙の中で言っているように、ハラムはL.T.を本当の父のように慕います。L.T.もたくさん教え子がいますが、優秀であり自分を慕うハラムを子供のように思ったでしょう。

そしていつしかハラムはL.T.の元を巣立ちます。
子の父からの精神的独立です。
ですがL.T.が教えたのは、人を亡き者にする技術でした。
それは訓練の回想にあったように、心を切り離すことです。そして本当に戦地でハラムは教えられた通り心を切り離してしまい、取り戻すことができなくなってしまいます。
そしてハラムは必死に父L.T.に助けを求めるのです。

心を取り戻したいと。

ではなぜL.T.はハラムの手紙を無視したのか?

詳しくは語られていませんが、L.T.は過去にトラッカーとしての仕事だけでなく、それを若い軍人たちに教えていました。
それはトラッキングの技術だけでなく敵地で速やかに相手を始末するためだけの技術。
L.T.はそんな人間を製造するマシンでした。
そしてL.T.は現在山奥でひっそり動物保護という過去と正反対の命を守る仕事をしています。
つまりL.T.は過去の自らの行いに本当にうんざりし、後悔しています。
そんなL.T.にとってハラムの手紙は過去の自分を思い起こさせるものです。
先述した通りL.T.は教え子ハラムに愛情がなかったとは思えないですが、そこに立ち向かうことができなかったでしょう。
何より自分が言った、心を取り戻す方法を教えてやることが出来ない。

ハラムは、ある1つの種を無かったものにしようとする(冒頭のアルバニア人へのジェノサイド)人間という種自体への疑問を持ちます。
そして自分たちが食物連鎖の最上位だと思い込み命への敬意がない人間を狩り始めてしまうのです。

ここで僕が思うのは、劇中ハラムは一貫してL.T.に助けを求めているんじゃないかということです。
ハンターの始末方法も、森の痕跡も、家への帰還も、街中での逃走も、最後の闘いも、全てL.T.への自分を始末しこの苦しみから解放してくれというハラムの叫びに感じるのです。
もちろん自分を忘れてしまったかのようなL.T.への憎しみも感じられますが、それ以上にL.T.へ始末してくれと言っているように見えます。
明らかにL.T.を倒せる時もあったし、逃げる気ならもっと遠くへ逃げれたはずです。
しかしハラムはL.T.を待つ。自分では止められない自分を止めてもらうために。

L.T.は初めにFBIから事件の写真を見せられ、その方法からハラムの仕業だと分かっていたはずです。
だからFBIの要請に応じたのも、今度は向かい合い自分の手で救ってやらなければならないと思ったからなんです。
ということは二人とも同じことを考えているんです。
だからこの映画はもう2人の世界でしかないんです。
その他の人物は空気みたいなものですね。
だから最後も自分たちの世界の共通言語である手造りナイフで語り合います。

そして神から子を手にかけろと言われた父はそのとおりに始末します。
この映画では聖書のように神は止めてくれません。
ここでいう神とはアメリカという国でしょうかね。
自分のために尽くしてくれた者たちを救ってくれないんです。

この映画はそんな戦争後遺症に苦しむ軍人の悲劇を描く一面もあったんです。

 

はい、ということでここまで、かなり無理矢理うまく社会問題なんかに当て込んで解釈してみましたー

 

疲れた

 

まあほんとにそんな風に感じられたりもするんですが、何かと中途半端なんでドラマ的にはいまいち乗り切れません。
この考察のようなもの は僕なりにこうだったらもっと面白かったのに!という願いの部分もけっこう入ってます。

てことでこれを踏まえて次は感想!

 



『ハンテッド』の良かったところ

ナイフ格闘アクション

冒頭から何回も書いている通り、トミー・リー・ジョーンズとベニチオ・デル・トロが繰り広げるナイフ格闘アクションは素晴らしかったです。こんなに近接格闘アクションが増えた現在ではその価値が少し薄れてしまった感もありますが、あれを初めて見たときのインパクトは忘れません。

序盤森のなかで、木の棒とナイフで闘うシーンがあるのですが、この時の互いにまず武器をさばき落とし合う動きが凄いと思ったんです。
普通の闘いみたいに避ける、ガードするじゃなく、さばく。肘が主体となる動きと言いますか…なかなか言葉にするのは難しいですね。

その闘いの終盤にはベニチオ・デル・トロが関節技をします。これもなかなか見ないですよね。あっても形のみというか嘘くさいというか、あまり面白くないんです。
でもこの映画ではあまりに自然な流れで出てきてびっくりしたのを覚えています。
相手の首をとるための関節技みたいな鋭さを感じました。

ラストのナイフバトルも肘をポイントにした動きが特徴的に見えます。
更に動脈切られないように首を守る動きや、咄嗟にナイフを持ち替えて攻撃したりと地味なんですが、素晴らしいんです。
L.T.が自分に刺さったナイフを抜いてとどめを刺すというアクションは気持ちよかったですね。
ハラムに刺さる瞬間は、そこまでが地味な動きの積み重ねなので、ついに刺さったぞー!という変な開放感みたいなものがあります。
血の出方も良かったです。

ベニチオ・デル・トロのホラー感

唯一直接描写として、ハラムが戦争後遺症に苦しむ姿が映される冒頭の睡眠シーン。
あの時のベニチオ・デル・トロの表情は怖かったです。
光と闇と頭の中に響く戦争地の音という演出も相まって妙に恐ろしいシーンでした。
変なスローも意図してないかもしれませんが恐ろしく、戦争後遺症の深刻さが伝わってきます。

この映画はハラムがおかしくなってしまった理由の説明、描写が弱いと言われています。
僕もそう思っていたんですが、何回か見直した際この短いシーンの恐ろしさに気づき、フリードキンを見直しました。

最後頭をさわるところ

ラスト、L.T.がハラムを刺した後にハラムの頭を撫でるように触りながら天を仰ぐシーンは、何とも言えない複雑な思いが伝わってきて良かったです。キャラクターの感情、関係などが分かる唯一良いショットでしたね。

『ハンテッド』のダメなところ、おしいところ

主人公2人の関係性の描写

アクションが素晴らしく、2人の対決という映画の焦点が定まっているので、その他についてはどうでもいいやというのが正直な感想なんです。アクション楽しめればいいやって感じなんで。

でもけっこう物語がシリアスなんですよ。
戦争後遺症に苦しむ軍人なんて社会性のあるテーマなんかも入っちゃて。
なのに何かと中途半端なんです。
だからといって何も考えなくていいお馬鹿なマッチョアクションだったら、この実戦的で地味でヒリヒリする格闘シーンは演出出来なかった気がします。

なので考察に書いたような二人だけの世界というものをもっと追求できれば良かったんじゃないかなあと思うんです。
2人の気持ちの葛藤やり取りは、格闘アクションで描くという硬派な演出だったのかもしれませんが、まあ普通は伝わらないですよね。
2人の悲しみみたいなのはよく表れていましたけど。
だからって2人の過去をダラダラと描いてお涙ちょうだいなウェット展開にしたらもっと最悪なので難しいところです。

僕としてはさらっと細かい仕草や描写でいいから、お互いがお互いを尊敬しあっていた描写を入れて欲しかったです。
それがないから2人の距離が永遠に遠く感じられ、ドラマ的に闘いにもイマイチ乗っていけないんだと思います。
そしてもっとハラムは分かりやすく狂気の人間にしたほうが良かったと思います。
目的が分かりづらかったんで。

あとハラムの痕跡を追う、L.T.のトラッキング描写を長くして、それによって師弟の心のやり取りみたいなのを描いたら良かったんじゃないかと。
まずそもそもこの映画の売りのトラッキング描写が分かりづらいですよね。
リアルを追求したのかもしれませんが、地味すぎるんで映画用にもうちょい派手なことしても良かったと思います。

 

ハラムを描くときの構図や彩度、光

良かったところと表裏一体な話ですが、ハラムの狂気性を表現するために取調室あたりで、ハラムの場面だけすげー分かりやすく青白い照明にして、彩度下げて、カメラ斜めにしたりしてます。
あざとすぎてちょっと笑っちゃいました。
方向性は合ってる気がするんですけど、もっとさり気なくやるべきだったんじゃないかと。
かなり安くさい画になってしまってました。

おわりに

ちょっと分かったような分析なんかしてかっこつけてみましが、とにかくこの記事で言いたいことは唯一つ!

『ハンテッド』は今のアクション映画の流れを作ったといっても過言ではないナイフ格闘アクションが楽しめる映画だから、とにかく観てみて!

ということでだけです。

ではでは。

映画『ハンテッド』を観る

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