映画『L.A. ギャングストーリー』はなぜ駄作になった?ネタバレ評価&解説
(C)2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

僕好みの豪華キャストに題材が40年代アメリカギャングものということで、公開時から観たい観たいと思っていた作品が『L.A. ギャング ストーリー』

今作の後日譚とも言える『L.A. コンフィデンシャル』(1997)が大好きだったので期待していたのですが、聞こえてくるのは酷評ばかり。

観る機会をすっかり逃してしまっていたのですが、他人と自分の評価はずれることが多いもの。
特に覚えているのはアンドリュー・ドミニクの『ジャッキー・コーガン』(2012)。世間は酷評の嵐でしたが、僕は大絶賛でした。
ということで昨日ついに意を決して観ました!

実際観てどうだったか感想を書きたいと思います。

『L.A. ギャング ストーリー』とは?(まだネタバレなし)

作品データはこんなかんじ

作品データ
原題 Gangster Squad
製作年 2013年
製作国 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 113分
映倫区分 R15+

スタッフ
監督
ルーベン・フライシャー
製作
ダン・リン
ケビン・マコーミック
マイケル・タドロス
製作総指揮
ルーベン・フライシャー
ポール・リーバーマン
ブルース・バーマン
原作
ポール・リーバーマン
脚本
ウィル・ビール
撮影
ディオン・ビーブ
美術
メイハー・アーマッド
衣装
メアリー・ゾフレス
編集
アラン・ボームガーテン
ジェームズ・ハーバート
音楽
スティーブ・ジャブロンスキー

キャスト
ジョシュ・ブローリン / ジョン・オマラ巡査部長
ライアン・ゴズリング / ジェリー・ウーターズ巡査部長
ショーン・ペン / ミッキー・コーエン
ニック・ノルティ / パーカー市警本部長
エマ・ストーン / グレイス・ファラデー
アンソニー・マッキー / コールマン・ハリス巡査
ジョバンニ・リビシコン / ウェル・キーラー巡査
マイケル・ペーニャ / ナビダ・ラミレス巡査
ロバート・パトリック / マックス・ケナード巡査
ミレイユ・イーノス / コニー・オマラ
サリバン・ステイプルトン / ジャック・ウェイレン
ホルト・マッキャラニー / カール・ロックウッド

1949年のロサンゼルスを舞台に、当時ロサンゼルスを牛耳っていた実在のギャング、ミッキー・コーエンを倒すべく立ち上がった警察官たちの闘いを描いたアクション映画です。
実話を基にしてはいますがフィクションです。

『L.A. ギャング ストーリー』あらすじ

舞台は1949年のロサンゼルス。
違法な商売で莫大な富を築いていたギャングのミッキー・コーエンに街は支配されていた。
警察も司法も街の有力者、権力は全て金で買収し、意のままに操るコーエンに誰も逆らえずにいた。
そんな腐敗したロサンゼルス市警の中で独りコーエンに立ち向かおうとするはみ出し者の刑事ジョン・オマラに、市警本部長パーカーはチームを編成しコーエン討伐を命じる。
その方法は警察の身分を隠し超法規的にコーエンを潰すというもの。
早速仲間をスカウトし作戦を実行していくオマラであったが…
といった感じ。単純な話です。

監督/ キャストについて

監督はルーベン・フライシャー。
長編デビュー作であるゾンビコメディ映画『ゾンビランド』(2009)が成功したことにより一躍有名になりました。
この『L.A. ギャング ストーリー』が成功したからと言っていいのか分かりませんが、ソニー配給のマーベル映画『ヴェノム』(2018)の監督に抜擢されています。
『ヴェノム』を観て思いましたけど、完全にコメディ寄りの監督なんですね。今のところ。
それを知った上で今作も観れば良かったです。
なぜか全然監督の名前意識してなかったんですよね、この記事書くまで。

そして主演はジョシュ・ブローリン。
はみ出し者の刑事ジョン・オマラを演じています。
この記事が映画についての10作品目の記事になるんですが、なんと4/10がジョシュ・ブローリン出演作品なんです。
それだけ好きな俳優です。
『ノーカントリー』(2007)をきっかけに好きになったんですが、こういったギャング映画に必要な強面のいい雰囲気を持った俳優です。
常に未見にシワがよってる感じ。

共演はライアン・ゴズリングにエマ・ストーン。極めつけはショーン・ペン。
ライアン・ゴズリングは大傑作『ドライヴ』(2011)で好きになったんですが、最近の『ナイスガイズ!』(2016)や『ブレードランナー2049』(2017)も最高でした。
個人的にはすごいハンサムな顔とは言えない気がするんですが、なぜかすごく画面映えするんですよねー。
多分何考えているか分からない感じがいいんですよね。

そしてショーン・ペン。
もう危ない男全開な感じの雰囲気が大好きです。
演じる役の幅はすごく広いんですが、私生活も激しい人という印象があるせいか『ミスティック・リバー』(2003)や『シーズ・ソー・ラブリー』(1997)あたりの気性が荒い役が好きです。
今作でも演じているのはギャングのボス、ミッキー・コーエン役。期待してしまいますよねえ。

そのほかにも『ターミネーター2』(1991)のT-1000役で有名なロバート・パトリックや、強面俳優界のボス(個人的にね)ニック・ノルティも出演しています。
もう観たくなる俳優ばかりです。

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『L.A. ギャング ストーリー』の感想(ここからネタバレあり)

うんこ度(このサイトではどのくらいつまらなかったかで評価しています)

7/10 かなり臭めのうんこ!

 

やはり前評判通りの駄作でしたー

 

超豪華キャストとかくれんぼを始めて、鬼である制作陣がそのまま帰ってしまったような映画でした。
ほぼ誰も印象に残らないんです。え?どこにいたっけ??みたいな感じ。

お金を払って劇場に観に行ったり、DVDやらVODで時間をとって観ようというのではなく、家族団欒中にテレビでたまたまやってて観る分にはすごくいいかもしれないです(子供いたらアウトね)。
何も考えず馬鹿みたいに無料で観るアクション映画としてはそこそこ楽しめるかと。

でもこれでお金取られたらキレます。
今回僕は時間を取られましたが…

ほんとにね、全て中途半端な印象です。
良い意味でも悪い意味でも何も心に引っかかるところがないんです。
そういう意味の駄作です。
心電図でいったら心臓止まってる状態です。
良い方にも悪い方にも心が動かない。無です。
途中で観るの止めてやろうかとも思いました。
ちゃんと完成はされているんですよ、ほんと手堅く。
だからクソつまらない。
もっともっと穴だらけのひどい映画の方が心に残って良かったかもしれないです。

脚本とキャラクター

まず脚本酷いです。

あんまりです。

もうなんのひねりもありません。
別にどんでん返しみたいなクソなことはしなくていいと思いますけど、ほんとに何も予想外のこと起きません。
小学生にギャングと警察で話を考えろと言ったら100人中90人が考えそうな話です。
一本道すぎて逆に深読みすると予想を裏切られます。

何も起きないんかーい!と。

とにかく単純すぎる勧善懲悪映画です。

それでも面白い映画には出来るはずなんですけど、話の大筋だけでなくキャラクターもペラッペラの学校のトイレットペーパー状態なんで面白くなるはずがありません。
こんなに誰一人魅力的でないのも珍しいですよ。

ジョシュ・ブローリン

まずジョシュ・ブローリン演じる主人公オマラ。
最初の娼館独り突入シーンこそ良かったものの(ここがこの映画のピーク)そっから一気にテンションがガタ落ちします。
コーエン討伐隊のリーダーですげーキレ者風な顔しといて、すげー馬鹿なんですよ。
娼婦救出は無謀でも良かったでしょうけど、本格的な作戦としてのコーエン討伐は慎重にやらなければならないはずなのに出たとこ勝負で相手の作戦にもすぐ引っかかる。

馬鹿丸出しです。
オマラの無謀で危険を顧みないところを説明したいがために冒頭に一番いいとこ持ってきてしまったせいで、その後それを超えるエピソードも個性もないです。
ということで顔は濃いけどなんか中身は薄いんですよ。

討伐隊のメンバーも一緒です。
サラリとテンポよく仲間にして本筋に突入させたかったのは分かるんですが、こういう映画の場合やっぱり仲間のキャラクターが魅力的でないと観るのが辛いと思うんですよ。
テンポ良すぎてキャラクターの個性ペラッペラです。
ナイフが得意!リボルバー銃が得意!盗聴得意!ってアホみたいな紹介だけじゃあダメでしょう。
スカウトシーン以外で超短いので良いから1エピソード、それぞれの人柄が分かるシーンが欲しかったです。

ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン

オマラの同僚役のライアン・ゴズリングも今回は損な役でしたねー。
主人公じゃないししょうがないとは思うんですが、無個性すぎて存在していたのか覚えてないレベルです。
いつもは映るだけで画が持つ気がするんですけど、今回はイマイチです。
立ちふるまいはかっこいいんですけど、中身がなくて軽いんですよね。
フィルム・ノワールのファム・ファタール(運命の女)的な役回りのエマ・ストーンと恋仲になるんですけど、2人揃って必要か?こいつらと思わせる無個性っぷり。
禁断の恋みたいな感じなのに全然ハラハラドキドキするシーンないし、エマ・ストーンには肌を見せるような官能的なところもない。
ほんと何のためにいるんだ、こいつら状態でした。

ショーン・ペン

そしてショーン・ペン。
なんでこれ引き受けちゃったんでしょうか。
ただの怖い顔したおっさんでした。
ステレオタイプの悪代官でしたよ、コーエンは。
冒頭にシカゴの敵対してる奴を両側から車で引っ張って真っ二つにするのがピークで、その後はこいつも無個性でしたねー。
ショーン・ペン演じてんのによくあるB級映画のケチな悪役で終わるという。
小物感がすごかったです。

ロバート・パトリック

唯一、老ガンマン刑事を演じたロバート・パトリックだけは少し良かったですね。
といっても映画とか本人が良いんじゃなくて、あんまり出演作観ないんで、また観れて良かったなあって話ですけど。
でもいい歳のとり方してると思いました、すごくいい顔してましたよ。
でもあの散り方はなんかイケてないですよね。
どうせ命落としてしまうならもっと壮絶なのが良かったです。
コーエンの用心棒を仕留めるって流れは良いんですけど、記憶に残らないつまらない最期でしたよ。
まあクライマックスの流れ全てが悪いせいでしょう。

ニック・ノルティ

あ、そうでした。忘れるとこでした。
パーカー市警本部長役のニック・ノルティ。こ
れは僕が勝手に思い込んでただけですけど、あのニック・ノルティの極悪な感じ、完全に黒幕フラッグ立たせてましたよね?
キャスト以外ストーリーとかの事前情報入れずに観たので、絶対にパーカーがなにかしたら裏で糸を引いているんだと思ってました。
そしたら見事にストレートにコーエン倒してみんな幸せハッピーエンド!
びっくりしましたよ。
こんなにひねらない映画も珍しいですよね。

アクションについて

アクションも先述したように、冒頭の娼婦救出は勢いやエレベーター腕グチャ事件などもあって非常に良かったんですよ。
やっぱり独りで突っ込んでいくってのは緊張感ありますよね。
『ダイ・ハード3』(1995)丸出しのエレベーター内格闘も悪くなかったです。
あとはねー、特に目新しいものもなかったし普通でした。
ギャング映画の雰囲気はすごく出ているし、アクション映画として面白くないわけではないんですけど、中盤にはもう映画自体にノレてないので全然緊張感を感じないんですよ。
予想通りに話は進むし、惰性でみてしまう感じでした。

気になったのは脱獄場面で殴り合いしている時に連発される一瞬のストップモーション。
あれはなんなんですかね?ない方がよっぽど良かったと思うんですけど。
ああいう変なことされるとテンションが下がります。
映画の嘘という側面を増大させるだけの愚行に思えて仕方ないです。
それと同じようにスローモーションも多用してました。
僕はいまいちアクションにおけるスローモーションの必要性が分かってないんですよ。
アクションて実際の速さや動きを感じられるから気持ちいいと思っているんで、スローにされると冷めちゃうんですよ。
一番強調したい動きの時だけ少しの間使うのはいいと思うんですけどね。

ラスト決着がボクシングのような殴り合いなわけですけど、元ボクサーのコーエンに殴り合いで勝ってしまうのが僕は気に食わなかったですね。素人がボクサーに殴り合いで勝てるわけないですもん。
ボロッボロになりつつもパンチ以外の要素で起死回生の勝利ってのが良かったなー。

笑いについて

記事を書くにあたってルーベン・フライシャー監督が『ゾンビランド』の監督だと知って思ったのですが、多分この作品はギャング映画というジャンルを解体してギャングコメディ映画にしたかったのではないかと思うんです。
『ゾンビランド』もゾンビ映画という1ジャンルを解体してゾンビコメディ映画に仕上げています。
つまりコメディ要素が一見薄いジャンル映画にコメディ要素を混ぜ合わせたいのがこの監督だと思うんです。
ルーベン・フライシャーが監督した『ヴェノム』も宣伝では凶悪な主人公が暴れまわるみたいなキャッチコピーだったのに、フタを開けてみればものすごいコメディ要素の強い映画となっていました。
でもさすがにこのシリアスなギャング映画に笑いは入れ込みづらいので途中で諦めはしたがちょっとだけ自分の要素を残そうとして、くっそ中途半端なコメディ要素が残ったのではないかと。

具体的にはコーエン撃退作戦の第一段階のバー突入シーンや、その後の脱獄の車で檻を引っ張るとこですね。あれはもう要らなかったですねー。シリアスな場面で起きる笑いって一生懸命な人間の行動のずれや空気感だと思うんです。
あれはただアホで間抜けなだけです。
全然笑えませんでした。

最後に

ここまでことごとくイマイチだと、制作陣は豪華キャストと豪華なセットを使って壮大な遊びをしたのかなあと思ってしまいます。
「どうせ超豪華キャストとギャングアクションてのに釣られて観にきたんでしょう?どうでした?見事に期待を裏切られたでしょ??」
と遠くで落胆する僕を笑っているんじゃないかと思えてきました。
そーんな感じの映画でした。

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